フランダースとは




小説「フランダースの犬」のタイトルとなっている=舞台となっている
フランダースとは 一体何なのでしょうか? どういう所なのでしょうか?

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そもそも ほとんどの日本人にとって
「フランダース」という言葉は 多分 「フランダースの犬」によって知られたのではないかと思います。
ということは 学校で習う世界史には 「フランダース」は取り上げられていないのでしょうか?
実はこれには 言語上の問題点という理由があるのです。

フランダースとは 今現在は ベルギー王国の中の北半分=オランダ語地域 という定義になっています。

それに対して ベルギー王国の南半分=フランス語地域は ワロンといわれています。

フランダースとワロン
(黄=フランダース 赤=ワロン)


しかしこの区分はずっと昔からこうだったという訳ではありません。
今現在は ということです。
そして フランダースという言い方は 実は 地元のオランダ語ではなくて 英語なのです。
小説「フランダースの犬」がそもそも英語で書かれていますから
その英語からの訳で「フランダース」という英語の言い方をするようになったと思われます。
地元のオランダ語では Vlaanderenフラアンデレン と言います。

しかし そこに住んでいる人のことは Vlamingフラミング そこで話されている言葉のことは Vlaamsフラアムス と言います。

しかしベルギーにはフランス語地域もあって
フランス語ではフランダース地方のことを フランドル と言います。
フランドルに住んでいる人 あるいはそこの言葉のことは
フランス語で フラマン と言います。

どうも日本の学校教育では このフランス語の
「フランドル」「フラマン」という言い方が使われているようなのです。
しかしそれと別個に 英語の「フランダース」という言い方も一般的になっていますので
ですから 地元のオランダ語の言い方が なかなか日本では普及しないようですし
「フランドル」と「フランダース」が同じものを指しているという認識もされていないようです。
ちなみに
オランダのオランダ語と ベルギーのオランダ語は
大きく言えば 同じものです。つまり オランダ語の範疇に入るものです。
しかし やはり地域的な違いがあって ということは「方言」なのですが
オランダで話されている言葉は「オランダ語」 それに対して
ベルギーのフラアンデレンで話されているのはフラアムス語と分けられています。
(しかし正確にはフランダース地方で話されている言葉は オランダ語の方言である
フラアンデレン語/ブラバント語/リンブルク語の三つに分かれます。)
ベルギーやオランダで出されているCDやDVDでは きちんと「オランダ語版」と「フラアムス語版」と分けられています。

そして オランダ語は そもそもお百姓さんの言葉でした。農民の言葉なのです。
ですから・・・繊細な表現も 情緒的な表現も ロマンチックな表現も 得意ではありません。
そして そういう言葉を話すフラアンデレンの人々は 当然・・・ロマンチックではありません。
ベルギーにも オランダにも ロマンチシズムというのは 無い といって良いかと思います。
そして これが なぜ 小説「フランダースの犬」が舞台となったフランダース地方で知られていないのか
という理由の一つなのです。

(この先は 「日本人と欧米人との捉え方の違い 」を御参照下さい)

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フランダースの定義は 昔は今とは違っていました。
今で言う「フランダース」は 中世には大きく三つに分かれていました。
(西から東へ)フランダース伯領/ブラバント公領/ローン伯領(リンブルク伯領 のちリエージュ司教領)で
この内 フランダース伯領はフランス王国に属し 他の二つは神聖ローマ帝国に属していました。
(フランダース伯領がフランス王国に属していたという歴史的経緯から
日本で「フランドル」というフランス語の言い方がされているのだと思われます。)

フランダース伯領の紋章
フランダース伯領の紋章


フランダース伯領はシュケルデ川の西側で 今日のフランスにまでまたがっています。
ですから フランスの一番北の海岸沿いの地域は元フランダース伯領であり オランダ語地域です。
フランスに属しているフランダース地方は「王冠フランダース」と言われていました。
それに対して 神聖ローマ帝国に属していたのは シュケルデ川の東側になりますが
こちらは「帝国フランダース」と呼ばれていました。
今日のフランダース地方が統一されたのは 1795年にフランスの統治下に入った時です。
1830年にベルギーとして独立してからは フランス語のみが公用語として使われていました。
つまり お百姓さんの言葉であるオランダ語は フランダース地方において
日常生活では使って良いけれども 公の場では使えない言葉だったのです。
その後 フランダース地方の あるいはフラアムス語の独自性を認識する
「フラアムス運動」が起こり 1960年代には 言語境界線が定められ
1993年からは ベルギー王国は連邦制をとっており
フラアンデレンは独自の政府を持つ独立した州となっています。

今日のフランダースの紋章
今日のフランダースの紋章

(小説「フランダースの犬」の中で「ブラバント」という地名が出てきますが
ブラバント公領は
1106年にルーヴェン伯に「ブラバント公」の地位が与えられたところから始まります。)

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Vlaanderenフラアンデレンという地名の由来ですが
海岸地帯は今から千年以上前はしばしば嵐によって水が岸に上がってきて
その度に農民や家畜たちは水が来ない場所に避難しなければなりませんでした。
この「避難 Vlucht」という言葉が元になっているようです。

それに対して
ワロン Wallonという言い方は
そもそもケルト民族の言葉で
イギリスにある ウェールズWales地方と同じ語源です。
「異民族の/異文化の」ということを意味しており
イタリアから来たシーザーたちが ケルト民族から見ると
「異文化の/異民族の人たち」ということで この言い方がされるようになったようです。

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小説「フランダースの犬」が書かれた1870年代初めは
ベルギーでは まだフランス語だけが公用語とされていました。
そして ベルギーの南半分 ワロン地方は 重工業によって非常に栄えていたのに対して
フランダース地方の産業は ほとんど農業のみでした。
小説「フランダースの犬」の中では アントワープの町のことも
アントワープ周辺(フランダース地方)のことも 余り印象良くは書かれていません。
これは 作者Ouidaウイダが芸術家であったことと
この当時のベルギーの様子との両方が理由になっているのではないかと思われます。
(その様にフランダース地方のことも アントワープのことも
印象良く書かれていないことが
この小説が 舞台となったフランダース地方で余り知られていない
もう一つの理由のようです。

→→→ フランダースやアントワープで知られていない理由

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