アントワープ〜地名の由来




大抵の観光ガイドブックには
アントワープの地名の由来として
「ブラボーの物語」が出ています。
ですので そこから始めましょう。

今から 二千年程前のこと
シュケルデ川沿いの要塞に アンティゴーンDruon Antigoonという巨人がいました。
シュケルデ川をまたいで立てる程の巨人で
シュケルデ川を通る船が股の下を通る時に重い税を課していて
もし 税を払わない船がいると
その船の船長の手を 手首から切り取って捨てていました。
紀元前57年頃 ユリウス・カエサル(ジュリアス・シーザー)は北ヨーロッパへ遠征に来ていましたが
ローマ軍を率いていたローマの勇士で ユリウス・カエサル(ジュリアス・シーザー)の甥である
シルヴィウス・ブラボー Silvius Braboがその話を聞き
アンティゴーン征伐にやって来ます。
数時間の格闘の後 アンティゴーンを倒したブラボーは
巨人の首と右手とを切り取り
右手をシュケルデ川へと投げ捨てました。
それ以来 この町は
hant(手)+ werpen(投げ捨てる)=(h)antwerpen と呼ばれる様になりました
そして ブラボーが投げた巨人の手が落ちた場所までの範囲が
 ブラボーによってアンティゴーンの圧制から開放された地域として
彼の名前を取って 「ブラバントBrabant地方」と呼ばれるようになりました。


この話によって
アントワープは二人の英雄を持つことになります。
一人は アントワープの町を拓いたアンティゴーン
もう一人が シュケルデ川を開放したブラボーです。


(ただしこの話には他にヴァリエーションがあります。
ブラボーがやって来るという話を聞いたアントワープの7人の若者が
「よそ者に手柄を取られたくない」と
ブラボーよりも先にアンティゴーンに挑戦を挑みます。
しかし 巨人を倒すことはできず
そこにやってきたブラボーがアンティゴーンを倒すことになります。
この時に戦ったアントワープの7人の若者が
その後アントワープの名門と言われる七つの家の元になりました。)


このブラボーの話は
15世紀頃の作り話です。
しかし 昔のアントワープの人々は
この話を真実だと信じていました。
1512年 Jaen Lemaire des Belgesによって編纂され出版されたこの話の本の表紙裏には
ブラボーの家系図が載せられていて それは
ユリウス・カエサル(ジュリアス・シーザー)の甥であるブラボーから初まって
その当時の統治者であるカール五世にまで続くものでした。
つまり 神聖ローマ帝国皇帝・スペイン国王・オランダ国王・オーストリア大公・シチリア国王・
ナポリ王・ミラノ公・ボヘミア王・ハンガリー王などを兼ね
アントワープが世界最大の商業都市として繁栄していた時代の統治者であるカール五世が
いかにもカエサル(シーザー)の血を引く 由緒ある家の出であるかのように思わせるものでした。
丁度その頃 シュケルデ川岸を掘る工事現場で大きな骨が発見されて
人々は「(とうとう)巨人アンティゴーンの骨が発見された」と思って
市庁舎まで運び込みましたが
結局は鯨の骨だということが分かりました。

アントワープ市庁舎前のブラボーの像


アントウェルペンの名の本当の由来は全く違います。
幾つかの説があるのですが
1)Andauerpaとそもそもは表記されていて 「(要塞の下の川岸の)係留地」という意味だった。
2)ande warp という言葉から来ていて あるいは
3)aen+werp からきていて 「〜に」+「投げる」という意味だった。(つまり荷揚げ場ということです。)
4)anda+(op)werpで 「堤防/土手」+「築く」を意味していた。


いずれにしろ 初期の頃から港であったことを意味しています。


アントワープ市の紋章
アントワープ市の紋章

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アントワープの人々のことを
Sinjorenシンヨーレンと言います。
これは スペイン語のセニョールから来ているもので
アントワープ市内に生まれた両親共にアントワープの人のみがこう呼ばれます。
中世のアントワープは大きな町でしたし 多くの商人が住んでいましたので
アントワープに住んでいる人たちは 「エリート」「スノッブ」あるいは「鼻が高い(=高慢)」
というところから この呼び名が付いたようです。
アントワープ市内に生まれても 片方の親がアントワープの人では無い場合には
Pagadderパガッデルと呼ばれます。
これもスペイン語のPagadorパガドールから来ています。


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