あらすじ




19世紀のなかば  ネロという名の アルデンヌ生まれの少年が
二歳の時に母親が亡くなったために
アントワープ近郊のホーボーケン村に住む 祖父のイェハン・ダースに預けられました。

ある日 ネロとイェハンおじいさんは
道端で死にかかって倒れている一匹の犬を見つけ 家につれて帰って
パトラッシュという名を付けました。
おじいさんの看護のおかげで パトラッシュは再び元気になり
その時から ネロとパトラッシュとは固い友情で結ばれることになります。

イェハンおじいさんは 村の農家から預かった 牛乳
アントワープの町まで運んで売る仕事で細々と生計を立てていました。
パトラッシュは 感謝の気持ちから 荷車を牽く仕事をし始め
それ以後 ネロとパトラッシュとで アントワープまでの道を毎日往復することになります。

ネロには  アロワという友達がいました。
彼女は村で一番のお金持ちの家の子でした。
しかし 彼女の父は 娘が貧しい少年と関わり合うのを嫌っていました。

ネロには他に誰一人知らない 素晴らしい絵の才能があり
ルーベンスのような画家になることを夢見ていました。
彼は 少年のための絵画コンクールに出品するつもりでした。
もし一位になれば 年200フランの奨学金が貰え そうしたらばこの先 絵を本格的に勉強することが出来ます。

イェハンおじいさんが亡くなった後 ネロは
アロアの家の風車に放火した疑いをかけられ
村の人々から冷たくされるようになって仕事も少なくなり
家賃の滞納から住まいを失い
望みをかけた絵のコンクールにも落選し
失意の内に ネロとパトラッシュはクリスマスのミサの終わった 聖母教会に入って行きます。
翌朝 ルーベンスの傑作「 キリスト降架」の絵の下で
硬く抱き合ったまま死んでいる彼らが発見されました。




[1] ネロNello・・・Nicolasニコラ(オランダ語表記ではNikraasニクラース)の愛称

[2] アルデンヌArdenne・・・ベルギー南部の丘陵地帯(フランス語地域)

[3] ホーボーケンHoboken・・・アントワープ市南部の区。この当時は独立した村

[4] パトラッシュPatrasche・・・Patricパトリックと同じ語源の名(ルーベンスの造語であり 一般的な名ではない)

[5] 牛乳・・・フランダース地方とオランダでは 酪農が盛んで牛乳は重要な産物でした

[6] アントワープAntwerp・・・ベルギー北部フランダース地方の都市。現地オランダ語ではAntwerpenアントウェルペン

[7] 荷車を牽く・・・犬が労役犬として牛追いや荷車牽きに使われるのはごく一般的なことでした

[8] アントワープまでの道・・・ホーボーケンからアントワープまではおよそ5kmあり 緩やかな下り坂になっています

[9] アロワAlois・・・オランダ語読みでアロイス(本来は男性名)

[10] ルーベンス Rubens・・・アントワープで17世紀前半に活躍したバロック絵画の巨匠(1577-1640)。現地オランダ語ではリュベンス

[11] 聖母教会・・・アントワープの旧市街に聳え立つ聖母大聖堂Onze Lieve Vrouw Kathedraal(1352-1521)。この当時は聖母教会

[12] キリスト降架・・・上記大聖堂内に展示されている 十字架からキリストの死体が下ろされる情景を描いた
ルーベンスの最高傑作とされる三連祭壇画(1612)



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