風車の歴史




オランダ語では風車と水車を総称して
「molen」と言います。
つまりこの二つが 人間にとっての動力源だったのです。
しかし 一応区別するために
「風車」=windmolen 「水車」=watermolen という言い方があります。


風の力を利用して 羽や帆を動かす(回転させる)「風車」が
最も早くから使われたのは イスラム圏のようです。
現存している文献に現れる 最も古い風車としては
紀元前1750年頃の バビロンのハムラビ王の時代のものです。
一世紀頃にはギリシャのヘロンが「風オルガン」を発明しました。
風の力によって羽車が回り それと連動したピストンからオルガンのパイプに空気を送り込むものです。
これが風を使って動かす装置としては
その構造が分かっている最も古いものです。

ヘロンの風車オルガン
ヘロンの風車オルガン


イスラム圏の風車は
回転軸が縦になっている 縦軸型風車でした。
9世紀頃のイスラムの記録では 東ペルシャで使われていた縦軸型風車について触れられています。
また 中国でも同様に 縦軸型風車が使われていました。

中国の縦軸風車
中国の縦軸風車


それに対して 北ヨーロッパでは
1180年頃からフランダース地方/南東イギリス/ノルマンディー地方で使われるようになった風車は
回転軸が横になっている 横軸型風車でした。
これは イスラムから伝わってきたものを改良したのか
フランダース地方での発明なのかははっきりしません。
この時代は
フランダース地方からも出発した十字軍が持ち帰ったイスラム文化が知られていた時代です。
(たとえば シリアの要塞を元にしたGentゲントのGravensteenグラーヴェンステーン城が築かれたのもこの頃ですし
同じ頃に出来た Bruggeブルージュの聖ヨハネ病院もまた
十字軍によってもたらされた病院のシステムを使った 北ヨーロッパで最古の例です。)
ですので イスラム圏から十字軍がもたらした可能性も大きいようです。
しかし 縦軸型から横軸型への変換という点で
フランダース地方で発明されたものではないかとも思われています。

石炭および電気モーターが発明されるまでは
風車は 水車と共に 唯一の動力源でしたので 様々な目的に使われていました。
水車が ある程度水の流れの速い山間で使われたのに対して
風車は平地の風が強い地域で使われました。
中世から18世紀末までは
ヨーロッパ各地で ある程度の強さの風があるところではどこにでも
木造風車や(石造りの)塔風車が建てられました。
しかし 多く分布していたのは
風が豊かな北ヨーロッパの丘陵地帯の北面 または海岸であり 特に
フランス/ベルギー・オランダの海岸地方/イギリス/ポーランド/バルト諸国/北ロシア/スカンジナビア
でした。
南ヨーロッパ(ポルトガル/スペイン/フランス/イタリア/バルカン/ギリシャ)では
主に 石造りで平らな屋根の(羽の向きが変えられない)塔風車が使われました。

ラ・マンチャ(スペイン)の風車
ラ・マンチャ(スペイン)の風車

しかし 産業革命が起きてからは
少しずつ 蒸気機関に取って代わられます。
1785年に 初めての蒸気機関が使われるようになって以来
その普及に伴って 新たな風車の建設は少なくなります。
19世紀末には ドイツ国内には1万8千基以上の風車が(水車はその約三倍ありましたが)
オランダには一万基以上の風車がありましたが
そのほとんどは使われなくなり 取り壊されました。
しかし 第二次世界大戦中から戦後にかけては
再び風車が使われるようになりました。
燃料や電気の入手が困難になったからです。
ドイツでは 1950年代に 風車大工は手工業者リストから外されます。
これにより 風車を建てたり修理したりする技術や知識は失われることになります。

今日では
ドイツには約1400基の風車と水車が
オランダには約1500基の風車が残されています。
また アメリカ合衆国では1880年代には 約六百万基の排水ポンプとしての風車が使われていましたが
今日まで残されているのは その内の一万五千基程です。

アメリカの風車
アメリカの風車


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